インコの呼び鳴きはなぜ大きい?自然界と家庭内で大きなギャップが存在
― 自然界から読み解く意味と、コンパニオンバードとしての本質 ―
インコやオウムの「呼び鳴き」は、しばしば“うるさい”と表現されます。しかしその音は、進化の中で洗練されてきた社会的通信(social communication)です。本記事では、自然界での意味からコンパニオンバード環境での理解、そして音量が大きい理由まで、科学的根拠をもとに整理します。
1. 自然界における呼び鳴きの役割
野生のオウム類は群れで生活します。呼び鳴き(contact call)は以下の機能を持ちます。
- 群れの位置確認
- 個体識別
- 安全確認
- 捕食者への警戒共有
これは単なる音ではなく、群れ維持のための社会的通信です1。森林のような視界の遮られた環境では、音が仲間をつなぐ生命線になります2。
2. 個体識別と“名前呼び”
多くのオウム類では、個体ごとに固有のシグネチャーコールが存在することが確認されています3。さらに仲間同士で音を合わせる「vocal matching」も報告されています4。
つまり呼び鳴きは匿名の音ではなく、「誰が」「誰に」向けた音かが区別される通信なのです。
3. コンパニオンバードとしての呼び鳴き
飼育下でもこの本能は消えません。ただし群れの構成が変わります。
- 野生:仲間の鳥
- 家庭:飼い主
そのため呼び鳴きは、
- 飼い主の位置確認
- 応答要求
- 社会的つながりの維持
として機能します。応答がない場合に発声頻度が増加する傾向も報告されています5。
4. なぜ音量が大きいのか
① 森林環境への進化的適応
オウム類は騒音環境の森林(密林、風音、滝、他種の鳴き声など様々な騒音環境)で進化しました。遠距離まで届き、障害物を越える音構造を持つことが示されています2。
家庭は静かでも、彼らの設計は「森仕様」のままなのです。このポイントを理解することが鳥と暮らす上でとても大切なのです。
② 生理学的構造
気嚢システムにより持続的で安定した呼気圧を維持できることが知られています6。
発声器官であるシリンックス(syrinx)は高効率で、哺乳類よりも精密な振動制御が可能です7。
さらに左右独立制御能力により、複雑で高音圧の発声が可能になります8。
大型オウムでは近距離測定で95〜105dBに達する例が報告されています9。
…実測音圧については別記事で具体データを紹介しています。
呼び鳴きのデシベル比較(ジェット機) を合わせてご覧ください。
③ 社会的緊急信号としての性質
野生では応答がない=危険の可能性を意味します。そのため
- 応答がないと音量が上がる
- 繰り返し回数が増える
というエスカレーション反応が観察されています10。これは進化的に合理的な行動です。
まとめ
呼び鳴きは、
- 群れ維持のための社会的通信
- 個体識別システム
- 安全確認行動
です。そして音量が大きい理由は、森林適応・高度な発声構造・応答前提の通信設計にあります。
私たちには大きな音でも、彼らには日常の会話なのです。
参考文献
- Bradbury, J.W. & Vehrencamp, S.L. (2011). Principles of Animal Communication.
- Wiley, R.H. & Richards, D.G. (1978). Physical constraints on acoustic communication.
- Balsby, T.J.S. & Bradbury, J.W. (2009). Vocal matching in parrots. Animal Behaviour.
- Berg, K.S. et al. (2011). Wild parrots exchange contact calls. Proc. Royal Soc. B.
- Meehan, C.L. et al. (2003). Social influences on captive parrot behavior. Applied Animal Behaviour Science.
- Maina, J.N. (2005). The Lung-Air Sac System of Birds.
- Goller, F. & Riede, T. (2013). Integrative physiology of avian vocal production.
- Suthers, R.A. (1990). Contributions of left and right bronchial sources to bird song.
- Wright, T.F. et al. (2008). Acoustic properties of parrot vocalizations.
- Vehrencamp, S.L. (2001). Signal matching in birds. Animal Behaviour.










































