「時にはオペラ歌手のように歌い、人間のようにしゃべる鳥」の秘密

最近、SNSでは ヨウムが人間のように声に抑揚をつけて話す動画をよく見かけます。
なぜ彼らはこんなに人間に近い行動ができるのでしょうか?

その背景には、**「シェル回路」**と呼ばれるオウム目特有の脳の仕組みがあります。

シェル回路とは?

2015年の Chakraborty ら(PLoS ONE) によれば、28種のパロットを調べた結果、すべてに「コア+シェル構造」が確認されました。

  • コア(core):基本的な発声を担う領域
  • シェル(shell):その外側に存在する追加ネットワークで、発声制御を柔軟にする役割を持つと考えられる

特に、大型のヨウムやコンゴウインコ、キバタンなどではシェルが大きく発達しており、高度な声の模倣能力と関係している可能性が示唆されています。

声に抑揚をつける能力

シェルは「発声の柔軟性」を担っていると考えられます。
そのため、ヨウムなどは単に言葉を真似するだけでなく、抑揚や感情を込めた声色で人間らしい発話が可能になるのではないか、と研究者は推測しています。

ただし、これはまだ仮説段階であり、今後の研究でより明確になる必要があります。

種による違い

シェルはすべてのオウム目にありますが、その発達度には違いがあります。

シェルの発達種の例特徴
大きいヨウム、コンゴウインコ、Amazonインコ、キバタンなど豊かな声の模倣、抑揚表現が得意
小さいセキセイインコ、ラブバードなど小型インコ類言葉の模倣は可能だが、抑揚やリズム同期は限定的

まとめ

  • シェル回路は、オウム目に共通して存在する「発声を柔軟にする追加ネットワーク」。
  • 大型種では特に発達し、声に抑揚をつける能力や複雑な模倣行動と関係している可能性がある。

つまり、SNSで人気の「しゃべる鳥」の背景には、まだ解明途上の興味深い脳科学が隠されているのです。

参考文献

  • Chakraborty M, Walløe S, Nedergaard S, et al. (2015).
    Core and Shell Song Systems Unique to the Parrot Brain. PLoS ONE 10(6): e0118496.
  • Patel AD, Iversen JR, Bregman MR, Schulz I. (2009).
    Experimental evidence for synchronization to a musical beat in a nonhuman animal. Current Biology 19(10): 827–830.
  • Jarvis ED et al. (2000).
    Molecular mapping of brain areas involved in parrot vocal learning. J. Neurosci. 20(2): 767–779.

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